・IBの心理学は難しいって聞くけど大丈夫かな?
・SAQとERQって何?
・IAのテーマ、どれを選べばいいの?
IBの心理学は範囲が広く、暗記・理解・論述をバランスよくやらないといけない科目。焦るのは当然です。
この記事では、心理学の基本・勉強法・試験対策・IAの構成・SLとHLの選び方まで丁寧に解説します。
IB専門塾「国際バカロレアアカデミー」では、世界トップレベルのIB卒業生による進路相談が可能!心理学が不安な方も、あなたに合った学び方を提案できます。
Contents
IB 心理学を始める前に知っておきたい3つのこと
IBの心理学には魅力もあれば、独特の難しさもあります。まずは「心理学では何を学ぶのか」「なぜ難しく感じるのか」「自分に向いているかどうか」を見極めるためのポイントを紹介しましょう。
そもそもIB心理学では何を学ぶのか?
IBの心理学では、「人の思考・感情・行動がどうやって作られるのか」を、実際の研究をもとに学びます。
また、IBではただものごとを覚えるだけでなく、研究結果などを使って主張を論理的に組み立てていくことが大切。ですので、「この行動を説明するにはどの研究結果が根拠に使えるだろう?」と考える練習をしていきます。
自分の視点で「なぜ人はこう行動するのか」を探っていく科目だと思っていてください。
なぜ「曖昧で難しい」と感じるのか?
曖昧で理解するのが難しいな…
心理学でそう感じることが多い理由は、正解が1つに決まっていない問題を扱うことが多いからです。
たとえば「なぜ人はストレスを感じるのか?」という問いがあったとします。ある研究では「ホルモンの影響だ!」と主張しますが、別の研究では「家庭環境や文化的な背景が影響する!」と主張するように、いくつもの考え方が存在します。
他の科目のように「これが正解」とはっきり言えないことも多いので、モヤモヤした気持ちになることがあるんですね。
心理学ではそうした「正解が一つではない問い」に向き合い、自分なりに根拠を持って説明する力を育てていきます。迷いながら考える過程そのものが、この科目の大切な学びなのです。
「向き・不向き」の見極めポイント
心理学は「人の感情や行動に興味がある!」という気持ちだけでは、乗り越えにくい面もあります。なぜなら「研究データを使って、文章で論理的に説明する力」も身につける必要があるからです。
「この行動は、〇〇という研究の結果と一致する」
このように、ただ感想を述べるだけでなく、「実験結果をもとに意見を組み立てる力」「読解力」「英語での表現力」も大切になります。
IBの心理学が向いている生徒の特徴例は下の通りです。
- 「社会のしくみ」「人の行動の理由」を深く考えるのが好きな人
- 英語での文章読解やエッセイライティングが苦手ではない人
- 実験や理論にも興味を持てる人
英語でのライティングが苦手だったり、論理を理解したりするのが苦手なら、少しずつ慣れていく努力が必要ですね。
「何を学ぶ科目か」を理解しておくことが、心理学を履修するかどうかの判断材料になります。
IB 心理学のコアアプローチを理解する3ステップ
IBの心理学では「3つのアプローチ」というものを学びます。心理学の「コア」と呼ばれる最も大切な部分で、試験・IA・授業すべての土台になります。
アプローチごとの違いや特徴を整理して紹介しましょう。
3つのアプローチの違いと基本理論まとめ
IB心理学のコアアプローチは、「生物学的アプローチ」「認知的アプローチ」「社会文化的アプローチ」の3つです。「人の行動をどの視点から説明するか」という点がそれぞれ異なります。
■生物学的アプローチ
脳・神経・ホルモン・遺伝子といった、「身体の仕組みから人間の行動を捉える視点」です。
たとえば「攻撃性が高いのは、セロトニンの量が少ないから」といった説明がこれに当たります。
■認知的アプローチ
記憶・思考・判断など、「心のはたらきで行動を捉える視点」です。
「ウソをつくときは記憶を塗り替えようとする」といった説明が該当します。
■社会文化的アプローチ
家族・学校・社会といった「周囲の人間関係や文化から行動を捉える視点」を指します。
たとえば「周りの友人グループが非行をしていれば、自分もそれに影響されやすくなる」というように、外部の影響から行動が起こる考え方です。
同じ行動でも、3つのアプローチによって説明が異なります。それぞれの視点をしっかり区別して理解しましょう!
3つのアプローチごとによく出る研究例・頻出用語
心理学の授業・試験でよく登場する研究と用語を、3つのアプローチごとに整理しました。必要なポイントに絞って覚えれば、試験対策も効率的になります。
■生物学的アプローチ
Passamontiらによるホルモン(セロトニン)と攻撃性の関係研究など、内分泌や脳構造が行動に影響する実験がよく出てきます。
よく出る用語:「ニューロン」「セロトニン」「fMRI(機能的磁気共鳴画像法)」
■認知的アプローチ
「Glanzer & Cunitz(1966年)の初頭‐終末効果(Serial Position Effect)」や「Wasonの2‑4‑6問題による確証バイアスの実証」が定番です。
よく出る用語:「ワーキングメモリ」「スキーマ」「バイアス」「認知的負荷モデル(Cognitive Load Theory)」
■社会文化的アプローチ
「Banduraの社会的学習理論(モデリング)」は環境による行動変化の実例で、とてもよく出てきます 。
よく出る用語:「ノーム(norms)」「サブカルチャー」「集団同調」
授業・試験で混乱しないためのルール
心理学で混乱しないために、授業や試験で情報を整理するルールがあります。特に意識してほしいルールを3点確認しましょう。
① 問いの「命令語」を読み取る
試験では「discuss(論じなさい)」や「evaluate(評価しなさい)」などの命令語が書かれており、それに合った答え方をしなくてはいけません。それぞれの意味を理解しておき、各命令語に合った構成の型を、下記のように決めておきましょう。
discuss:肯定・否定両方の意見を考え、自分の結論を述べる
evaluate:研究や理論のメリット・デメリットを比較し、信頼性や弱点にも触れる など
② 研究の説明は「4ステップ」で書く
研究の説明は「目的 → 方法 → 結果 → 結論」の流れを意識しましょう。いつでもこの流れで書けるよう、毎回同じ型で書くのがポイントです。
③ アプローチごとの違いを表で比較
3つのアプローチの簡単な比較表を自分で作っておくと、どの研究を使うべきかがすぐに分かるようになります。
アプローチ | 注目点 | 研究の例 |
---|---|---|
生物学的 | 脳やホルモン | セロトニンと攻撃性 |
認知的 | 記憶や思考の流れ | 初頭‐終末効果 |
社会文化的 | 周囲の環境・文化 | Banduraモデリング理論 |
IB 心理学のIAテーマ選びと構成方法
心理学のIA(Internal Assessment)は、実験を自分で再現・分析し、レポートとしてまとめる課題です。テーマ選びから構成まで、入念な準備が必要になります。
「どんなテーマがいいの?」「レポートの組み立て方は?」と悩む高校生向けに、IAを成功させるためのステップを紹介します。
テーマを選ぶときの発想法とNG例
自分でテーマを選んで実験をするからといって、すごいアイデアやオリジナリティあふれる実験である必要はありません。大切なのは、信頼できる実験をシンプルにすることです。
たとえば教科書に載っている有名な実験を、少しアレンジして実行する方法もいいでしょう。ロフタスの「偽の記憶」研究で質問文を変えて記憶のずれを調べる、というようなテーマもよくあります。ストループ効果やプライミングなど、身近で測定しやすい心理効果も人気です。
逆に「面白そう」と思うテーマでも、内容が複雑だとデータが取れなかったり、レポートで説得力が出せなかったりと、かえって評価が下がることも。
倫理的に問題のある内容や、変数が多すぎて比較できないものも避けましょう。
テーマは「簡単すぎるかも」と思うくらいでOKです。シンプルな構造で、なぜそれを選んだのかが説明できる実験こそ、IAでは高評価につながります。
高得点を狙うためのIAレポート構成
IAレポートでは、5つのセクションを明確に分けて書くことが基本です。どんなにいい実験でも、構成が微妙だと評価されにくくなります。
以下が基本の構成です。
①Introduction(導入):
テーマの背景・目的・予測(仮説)を簡潔に書く
②Exploration(方法):
実験の手順・参加者・変数を説明する
③Analysis(分析):
数値データの処理・平均や差の比較・グラフや表の活用など
④Evaluation(考察):
結果の説明、予測との一致・ズレ、限界点や改善案も書く
⑤References(参考文献):
使用した研究や理論を正しく引用する
たとえば、導入があいまいだと「なぜこの実験をしたのか」が伝わりませんし、考察が弱いと「なんのための実験だったのか」の説得力がなくなります。
IAレポートは内容だけでなく「見せ方」も点数に大きく関わるということですね。
採点者に伝わるよう、項目ごとに分かりやすく書き進めていきましょう。
IB 心理学のSAQ・ERQ書き方テンプレと練習法
IB心理学では、最終試験としてSAQ(短答記述)・ERQ(長文エッセイ)の2つの記述問題が出題されます。暗記だけでなく論理的に説明する力が必要なので、苦手な生徒も多いです。
ここでは、SAQとERQの違いを理解し、どちらも「どう書けばいいか」が明確になるテンプレートと練習法を紹介しましょう。
SAQ/ERQそれぞれの配点と時間・文字数目安
まずはSAQとERQ(Extended Response Question:長文22点)の配点・時間目安・文字数目安を整理しておきましょう。
■SAQ(短答記述)
配点:8点
時間目安:約20分
文字数目安:200~300語
■ ERQ(長文)
配点:22点
時間目安:約55分、プラス見直しに5分
文字数目安:約800~1,000語(SLでは800語程度が目安)
時間や文字数の目安を知っておけば、SAQでもERQでも焦らずに書き進められます。
実際に使える構成テンプレートと導入表現
試験では「構成テンプレート(型)」と「導入表現」を使って始めれば、スムーズに書くことが可能です。SAQとERQそれぞれの例を紹介します。
■SAQのテンプレ例&導入表現のコツ
構成テンプレート
- 問いに対する自分の答え・主張を、はじめに1文で書く
- 「研究名・研究の目的・方法・結果」を簡潔に紹介
- 研究結果が問いとどうつながるかを説明
導入のコツ
命令語に合った動詞(例:「illustrates」 「demonstrates」「investigated」など)を早めに使い、文の目的がしっかり伝わる構成を意識しましょう。
例:命令語が「Describe one study…」の場合
「One study that illustrates this is Newcomer et al. (1999), which investigated the effects of cortisol on verbal memory.」
■ERQ用テンプレ&導入表現
構成テンプレート
- イントロ:問いに対する自分の意見・使用する研究を書く
- 本論1:研究A(目的・方法・結果)
- 評価1:研究Aの良い点・悪い点
- 本論2:研究B
- 評価2:研究Bの良い点・悪い点
- 結論:全体のまとめ・問いへの最終的な答え
導入のコツ
最初に自分の意見と使う研究を書けば、「何について書くのか」を採点者にしっかり伝えられます。
また段落の冒頭に「Topic sentence」として研究名と内容を短くまとめると、読みやすさがさらにアップします。
まずはこれらのテンプレ・導入表現をコピー練習します。この流れで自然と書けるまで繰り返しましょう。
練習・添削で力をつけるおすすめステップ
SAQ・ERQの成績を伸ばすには、「量より質」が大切です。以下の4ステップを定期的におこない、答えの質を上げていきましょう。
① 本番さながらに「制限時間で練習」する
SAQは約20分、ERQは約55分+見直し5分で練習しましょう。時間を意識すれば、本番での焦りに強くなります。
② 構成テンプレートで全体を組み立てる
上で解説した「SAQ:導入→研究→結論」「ERQ:6段落構成」で設計書を作ります。これで書き始めやすくなり、構成もブレません。
③ 自分や他人の回答を比べて改善点をメモする
書き終えた自分の回答と他人の回答を比較し、「こう書けば論理的でわかりやすいのか!」と振り返りましょう。
④ 定期的に「振り返り→復習→再チャレンジ」する
練習後は必ず、内容・時間・命令語ミスなどを振り返り、ノートや表にまとめます。改善ポイントをもとに再チャレンジしましょう。
この4つを続けていけば、「本番でも自分の言いたいことを伝える力」が身につきます。
IB 心理学でSLとHLを決めるための比較ポイント
IBの心理学には、SL(Standard Level)とHL(Higher Level)の2つの履修レベルがあります。「どちらが自分に向いているのか?」「成績や進路への影響はある?」と悩む方も多いでしょう。
SLとHLの違いを整理し、自分に合った選び方を解説します。
学習範囲・難易度・評価の違いとは?
SLとHLの大きな違いは「学習範囲」と「難易度と評価の違い」にあります。この違いを知り、自分の興味や進路に合わせて選びましょう。
まず、学習範囲の違いについて。SLでは「コア3分野(生物・認知・社会文化)」に加え、オプション分野を1つだけ学びます。試験もPaper1・2のみです。一方、HLではオプション分野が2つに増え、さらにPaper 3という追加試験もあります。
つまりHLはSLよりも分野や試験が多く、広く理解しないといけないということですね。
次に、難易度と評価の違いです。SLはHLよりも設問が少なく、問題の難易度を比べてみても低くなっています。そのぶん勉強の負担が軽く、授業・課題・試験のバランスが取りやすいです。HLは設問数も多く、知識だけでなく分析力・論述力も問われます。
心理学を専門的に学びたい生徒にとって、HLは実践的な力を磨く練習になるんですね。
「SLは基礎を押さえる入門向け、HLはより深い探究を目指す方向け」と考え、自分の興味や将来像に合わせて選択しましょう。
希望の進学先・他教科とのバランスを考えて選ぼう
希望の進学先・学習スタイルに合わせて、HLかSLかを選ぶことが大切です。
大学で心理学や社会科学を学びたいなら、HLの内容が入学審査で有利になります。これらの学部では、HLの履修が理解力や研究スキルの証明になるので、推薦や選考にもプラスになることが多いです。
「興味はあるけど専攻までは考えてない」「ほかの科目や活動とのバランスを取りたい」といった場合なら、SLでも心理学の基礎を学べますし、他教科とのバランスが取りやすいです。
SLでも学内・大学入学後の単位認定に使える場合もありますよ。
将来どうなりたいか、どのように勉強していきたいかをよく考え、選ぶようにしましょう。
IB 心理学の勉強法とオススメ教材
心理学は、用語や研究の暗記に圧倒されがちです。学習法とオススメ教材を把握、スコアアップにつなげましょう。
英語が苦手でもOK!用語対策とサポート術
英語が苦手な人でも、用語をしっかり覚え、心理学を勉強できる方法があります。以下の工夫を取り入れてください。
■フラッシュカードで定期的に復習
QuizletやCramなどのフラッシュカードアプリを活用しましょう。スキマ時間に繰り返し確認できて便利です。「ニューロン」「スキーマ」「ノーム」といったキーワードを、英語と日本語で覚えるといった方法ですね。
■Traffic Light(信号)方式で理解度チェック
重要用語を「緑=人に教えられる」「黄色=不安あり」「赤=理解できていない」に色分けします。これによって、自分が本当はどこでつまずいているのかが一目瞭然になります。
■日本語と英語を往復しながら学ぶ
英語だけで覚えるのではなく、日本語→英語→概念の順で復習しましょう。授業のノートに英語訳を書いたり、まず日本語で理解してから英語表現にしたりすることで、混乱を防いで記憶しやすくなります。
オススメ教材の使い分け方【Oxford・Revision Guide】
IB心理学の教材には目的別に合うものを選ぶことで、学習の効率と楽しさが格段に上がります。代表的な教材の特徴と使い方を比較してみましょう。
■Oxford IB Psychology Study Guide
元IB試験官によって執筆された解説書で、SL・HL両レベルの内容に対応しています。各章で重要用語・研究・試験のポイントが整理されているので、知識を短時間で定着させたい人向きの教材です。グラフや図も多く、視覚的に理解しやすいのもいいですね。
■Revision Guide(Hodderなど)
学んだ知識を使える形にするための演習中心の教材で、SL・HL両方の練習で使えます。過去問形式の練習問題が多く、解きながら実力を伸ばすことが可能です。
両方を使うなら、Oxfordで基礎を押さえる→Revision Guideで実践練習の順番で使いましょう。
動画・SNSでモチベーションを保とう
心理学の学習は覚えることや考えることが多いので、勉強を継続させるのが大変です。テキストだけでなくいろんなデジタルツールを活用してモチベーションを保ちましょう。
IBに関するYouTubeチャンネルもその一つ。たとえば「Themantic Education」というチャンネルでは、IBの心理学についてわかりやすく解説しています。「自分もできそう」と思えるヒントが満載です。
SNSや学習コミュニティも活用しましょう。Twitter・Reddit・Facebookには、IBの心理学を学ぶ先輩や同級生がいます。
・こんな研究を使ったよ!
・SAQの書き方で悩んでる…
こういったリアルな情報を共有できるので、「自分だけじゃない」と心の支えになります。
#IBPsychology や #IBTL などのハッシュタグで検索すると情報に出会いやすいです。
ただし、SNSで繋がった人たちとむやみに会うのはNGです。上手に使い分け、勉強のモチベーション維持に活用していきましょう!
IB 心理学は曖昧だからこそしっかり計画を立てよう
IB心理学の内容・勉強法・IA対策・教材の選び方・SL/HLの違いまで、徹底的に解説しました!この記事で紹介したポイントを振り返っておきましょう。
- 心理学は暗記と論述力が大切!
- SAQ・ERQにはテンプレを活用しよう
- IAはテーマ選び・計画力・考察力までバランスよく問われる
- SLとHLは出題範囲や難易度が異なる。負担や進路で選ぼう
- 教材やSNSを活用することも大切
・心理学を履修するべきか分からない…
・他の教科とバランスが取れるかな?
そんな風に悩んだときは、IB専門塾「国際バカロレアアカデミー」の無料相談を活用してみてください。あなたにあった進路を一緒に考えてくれますよ!